独創性と機能性のあるデザインが卓越
「アイリーン・グレイ」は、20世紀の建築家としては珍しい女性建築家で、家具・インテリア・プロダクトデザイナーまで手掛けている人物です。彼女の家具は、独創的でそれでいて使う人にとって自由度がある家具が多いのが特徴です。まさに独創的でかつ機能性も追求した家具と言えます。
まずその形は見た人に強い印象を与える独創的なものとなっています。彼女がデザインした家具はオークションで30億以上の値段を付けた物があります。20世紀の椅子の中で最高値を付けた椅子です。当時はそれほど評価されなかった女性建築家ですが、彼女の家具はオリジナリティにあふれたものです。その魅力に憑りつかれた人もいる家具です。
タイヤを重ねたような独創的なクッションが魅了
こちらは「ビベンダムチェア」です。「ベビンダム」という名前はタイヤ―メーカー「ミシュラン」で有名なキャラクターから名づけられています。タイヤを積み重ねたような個性的でユニークなデザインは、それでいて女性的な曲線と言われています。確かにこれに座ってみると女性が女性らしく見えるソファと言った印象にもなるソファです。優雅なフォルムでアームから背中にかけて円筒形のクッションが積み重なっています。そして、そのクッションが座った際にしっかりと体をホールドしてくれるようになっています。女性などが座ったらまさにしっかりホールドされる感じです。それも意外と優しく包み込んでくれるチェアです。
まさに独創的なデザインでこのホールド感と言った機能性を実現するために「ベビンダムチェア」は独創的な形を取ったものと言えます。クッションを積み重ねるなどと言う発想はオリジナリティにあふれています。後ろ姿を見てもその存在感は圧巻です。20世紀にこんな独創的なデザインを考えた「アイリーン・グレイ」は女性という事もあって当時はあまり評価されませんでしたが、この家具にはまさにデザイナーズ家具としての風格があります。
どこにでも置けるサイドテーブルの独創的な形
また、「アイリーン・グレイ」を有名にしたのは、「E1027サイドテーブル」と言われている画期的なテーブルです。「アイリーン」がインテリアデザインを手がけたE1027邸でデザインした家具の1つです。彼女は、建築家ですが、建築だけでなく家具やじゅうたん、照明などもデザインすることを目指した人物です。建物の内部を家具などのインテリアで演出することを強く打ち出しています。
「E1027サイドテーブル」がなぜ素晴らしいのかと言いますと、それまではサイドテーブルと言うと、決まった所にしか置けないというイメージでしたが、このサイドテーブルはどこにでも置けるというものです。支持脚が真ん中ではなく端に寄って設計されたことでベッドサイドやソファのすぐ近くにも置くことができ、また高さも自由に調節できるという独創的なデザインです。高さがスライドし、自由に設定できるようになっています。
ちょっとしたデザインの工夫なのかもしれませんが、この自由な発想を行ったことで、使う機能性が格段にアップしています。ソファやベッドの脚やアームが邪魔で置けなかったケースもこのサイドテーブルなら自由な場所に置くことができます。まさに場所を選ばず、人にも使いやすいユニバーサルなサイドテーブルと言えます。寝たままでも近くにテーブルを置くことができます。自由が効くテーブルと言った優れた機能性は使う人にとっては本当に嬉しいものです。脚を端に寄せるという発想の転換から機能性がより追求されたデザインとなっています。そして、それも機能性だけでなくデザイン性も美しいものとなっている貴重なテーブルです。
自由度が高いデザイン性の高いデイベッド
こちらは「アイリーン・グレイ」デザインの「デイベッド」です。シンプルですがとても美しいデザインです。こちらもサイドテーブルと同じ「住宅E.1027」のインテリアとして作られたものです。どこからでも座ることができる「デイベッド」で、またどこに置いてもいいデザイン性の高いベッドです。部屋の中央に置いても絵になる「デイベッド」ではないでしょうか。存在感のある大きなソファを支えるのは、細く洗練されたステンレスの脚です。大きなソファとそのステンレスの脚の繊細さが何とも美しいコラボレーションとなって映えます。これも女性らしい繊細なデザインと言えるのではないでしょうか。
また、彼女のデザインした家具は、その洗練されたシンプルな美しさが20世紀のデザインとは思えないほど新しい感覚のものです。まさにモダンなデザインが特徴的です。モダニズムの母とも呼ばれる「アイリーン・グレイ」の魅力は、モダンなインテリア性の高さと独創性です。
同時にどこから座っても同じ満足感が得られるような機能性を創り出しています。彼女が作る家具はいつも独創的でありながら、使う人が自由に使え、使い心地が満足できるものを目指しています。まさに独創性と機能性の両方を追求した家具を作った建築家と言えるでしょう。
ひとつの家具にあらゆる用途を考えて
そうした独創的なデザインを行った「アイリーン・グレイ」の家具のテーマは、「ひとつの家具が持つことのできるあらゆる用途を考えていた」というものです。彼女がデザインした一つ一つの家具は、それを様々な用途で使えるように工夫がなされたものとなっています。
「デイベッド」もソファとしてリビングの真ん中においたりすることもできるなど実際に私達も自分なりのいろいろな使い方をしてみるのもいいでしょう。まさにソファでもあり、ベッドでもあるという自由な使い方ができ、どの向きに置いてもいいようなデザインです。使う人がどこに置こうかと言った選択の自由ができる家具です。そして、美しいデザイナーズ家具はどこに置いても似合う、一つのインテリアとしての完成度の高い家具となっています。例えばこの「デイベッド」を一つ置けば、多くの人が集まるパーティのような場所でも活躍してくれそうではないでしょうか。どんな風に使おうかと言った楽しみが広がる頼もしい家具となっています。
レトロとモダンの両方の魅力
例えばこの「アイリーン・グレイ」の「デイベッド」も、レトロな雰囲気のするレザーとステンレスの洗練された輝きの脚と言った2つの素材が一緒に共演するものです。女性らしい美しいデザインの共演です。牛革の美しさを演出するオーソドックスな大きな座面デザインが印象的な「デイベッド」です。また細く美しく洗練されたステンレスの脚が対照的でモダンな印象です。女性デザイナーらしい「デイベッド」の優雅で細い脚となっています。背の部分も1本のステンレスで実にシンプルでモダンな造りとなっています。
彼女が多くのデザインを行った当時の20世紀は、装飾性を排除する方向でもありました。しかし、彼女はインテリアとしても楽しめる家具を提唱し続けました。今でこそ家具はインテリアとして考えられていますが、彼女が作る家具はインテリア性の高いものを目指したものです。どこに置いてもデザイナーズ家具としてのモダンなインパクトがある家具です。そしてモダンなだけでなく機能性をしっかり発揮してくれる家具です。
住まい手の個性にも寄り添いながら、家と言う建築物の中でもっと自由に使える家具を目指した人物が「アイリーン・グレイ」と言えるのではないでしょうか。それが建築と共に家具などもデザインした女性建築家「アイリーン・グレイ」の魅力と言えます。