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バルセロナチェアが目指すもの

バルセロナチェア

1929年に「バルセロナ万博」が開催された際にスペイン国王夫妻を迎え入れるためにデザインされたと言われるのがこの「バルセロナチェア」が作られたきっかけです。

ドイツ生まれの建築家であり、哲学者、芸術家でもある「ミース・ファン・デル・ローエ」がデザインした「王様の椅子」と呼ばれるものです。それだけに「バルセロナチェア」は各所に最高級なものを追い求めた椅子です。

特に脚のデザインに異彩を放ち、古代より力の象徴とされた「ハサミ」の形をモチーフにしたと言われています。

「バルセロナチェア」の脚はなぜこのようなデザインになったのでしょう。デザインが目指したものに迫ってみます。

機能が形を決定するとは

哲学者でもある「ミース・ファン・デル・ローエ」は、「機能が形を決定する」という考え方で近代工業デザインに取り組んだ建築家です。

この脚のXに交錯するラインは、座面をしなやかに、そしてしっかりと支えようと考えた結果、この形になったのではないでしょうか。ステンレスは細くてもしなやかに支えることができる素材として彼の椅子には大事なものとなっています。

「ミース・ファン・デル・ローエ」は、建築に関する考え方も材料や技術によって様々に変化する流動的なものと捉えた建築家です。例えば、この「バルセロナチェア」が作られた1929年のバルセロナ万国博覧会で建設されたドイツ館、バルセロナ・パヴィリオン(Barcelona Pavilion)を彼は鉄とガラスで構成し、大理石の壁を配しています。

とても個性的な新しい素材を組み合わせた建築物になっていて、モダニズムの空間を実現した建物として建築史上有名となっています。

そして、彼がデザインした「バルセロナ・チェア」も、独創的なデザインのステンレスと革を合わせたものです。新しい感覚のデザインのステンレスと革との組み合わせで椅子の機能性と美しいデザインを追求しています。モダンデザインの椅子の傑作として知られている「バルセロナ・チェア」です。

ステンレスを起用し美しい輝きを放つ魅力的な「ミース・ファン・デル・ローエ」の「バルセロナチェア」です。

ステンレスの輝きとたくさんの「最高」の出会い

「バルセロナチェア」のステンレスの脚はいつまでも輝き続けるように鏡面磨きが行われています。鏡のように光の反射によって物を映すほど磨きあげられた仕上げのことを「ポーリッシュ仕上げ」と呼びます。

職人の熟練した手作業によって実現させることができる貴重な仕上げです。職人の技術がなければこの美しい輝きは生まれないものでしょう。

脚部のX部は特にポーリッシュ仕上げのステンレスの美しさが際立つ部分です。溶接された接合部も滑らかで、まるで接合に気づかないほど美しくうっとりします。

また、全てのステンレスフレームにスチールバー(板状の鉄)を使用しています。スチールバー(板状の鉄)の磨き上げられた角部分がステンレスの美しさを印象付けています。これまでの丸いスチールパイプの椅子に比べて、スチールバー(板状の鉄)が洗練された美しさを放っています。

そして、床面との接着面の脚の美しさも見事です。その曲がり具合の美しさはハサミに例えられているほど個性的かつ印象的なものです。

イタリア製総本革とステンレスの美しい出会い

そして、美しい眩いばかりの輝きを見せるステンレスとイタリア製総本革の組み合わせもとても魅了的です。ステンレスと総本革が最高の出会いをしているもので、それぞれに最高級の美しさを追求して組み合わされています。

スペイン国王の為に従来のスチール椅子のような大量生産、簡易な工程とは異なる特別な仕上げとなっています。この椅子には素材、製法、仕上げ、技術と最高の物が求められていて、まさしく「王様の椅子」を作るためにこだわり抜かれたものです。

革には、イタリアの革メーカー「MASTROTTO社」のトップグレードの革のみを厳選して使用。きめ細かく、しなやかな革となっています。深みのある艶やかな革の色合いと革のすべらかな肌触りを誇ります。

また、背面を見ると、ステンレスのフレームと牛革が細かく織り込まれている様子を見ることができます。細かな造りが見てよくわかるものです。

美しい椅子はどこから見ても美しいとよく言われますが、「バルセロナチェア」も正面からも横や斜めから、そして背面からも美しい姿を見せてくれます。まさに完璧な姿のどこから見ても美しい姿のデザイナーズチェアです。

シンプルで最高を目指す「王様の椅子」

「王様の椅子」と呼ばれる「バルセロナチェア」ですが、その姿はとてもシンプルなものと言うこともできます。スッキリとした薄めの座面と背面のクッション、ステンレスの細くて美しい曲線の脚、そして他に装飾は何もない椅子です。どちらかと言うと、クラシカルな雰囲気を感じさせるシンプルなデザインの椅子と言えるでしょう。

“Less is more.” (より少ないことは、より豊かなこと)と言ったテーマを掲げたことでも有名と言われる「ミース・ファン・デル・ローエ」です。装飾のないシンプルなデザインに美しい形を追求し、そして機能性を求めたのが「バルセロナチェア」です。

シンプルなデザインですが「王様の椅子」は、最高級できめ細かな革の感触とステンレスの美しいハサミのような脚で機能性を追求した椅子です。ステンレスの曲線の脚がしなやかに座面を支え、体を支えてくれる機能性に優れています。

Xの脚は実際に座ることでしなやかな座り心地を感じることができます。座った時の最高の座り心地を追求しています。

こうして1929年にスペイン国王のために最高の座り心地を目指した椅子は、今でも世界中で人気の椅子です。今も世界の多くの人から愛され、売れ続けています。

今ではジェネリック家具としても手に入り、嬉しい事に私達にも手が届きやすくなった「バルセロナチェア」です。「バルセロナチェア」と「オットマン」を組み合わせたりすることで、さらなる贅沢気分を味わってみることもできます。シンプルなのでいろいろな部屋にコーディネートすることができるのも魅力の1つです。

他のデザイナーズチェアと合わせても合わせやすい「バルセロナチェア」です。おしゃれでかつコーディネートしやすいというのは魅力です。1人掛けタイプ、2人掛けタイプのダブルなど、1つでもセットで揃えてもモダンな印象を部屋に与えてくれます。

必然のデザインと機能性

こうして考えてきますと、最初の「機能が形を決定する」と言ったことから、このソファを支えるためにはXのハサミ状の脚が必然だったということになるでしょう。そして、全ての素材へのこだわりと技術が結集したことで、この「王様の椅子」が誕生したと言えます。

「ミース・ファン・デル・ローエ」は、”Less is more.” (より少ないことは、より豊かなこと)とシンプルでモダンな椅子を追求した結果、この「バルセロナチェア」のデザインを創り出しています。

また、椅子はこんな素材で作られなければならないという固定的な考えやこんなデザインでなければならないと言った観念からも解き放たれていた「ミース・ファン・デル・ローエ」です。

彼が作った「王様の椅子」は、そんな自由な発想の元に作られた素材とデザインの出会いの椅子と言えます。新しい素材と技術の結集と言える「王様の椅子」を私達の部屋に置くことが出来れば、私達にとっては最高の椅子との最高の出会いをしたことになるのではないでしょうか。

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