ワイヤーの一体構造の「ダイヤモンドチェア」
ワイヤーのみで構成されているのが「ハリー・ベルトイア」デザインの「ダイヤモンドチェア」です。座面と背面が一体構造になっていて、美しい曲面を描き、そして脚の直線までもが全てワイヤーで作られています。
美しいステンレス構造で、まさにワイヤーで作られたアートというべき作品です。どうやって作られているのか、置いて鑑賞してみたくなるデザインです。3Dで椅子のデザイン図を描いてみたらこのような図面になるのではと言ったデザインです。
座面も背面も人の体に合わせた曲面になっていて、ワイヤーの網目の大きさを変えながら細かく製作されています。
こんなメッシュ構造のチェアという発想は確かな技術がないと生まれてこない物ではないでしょうか。
細かく交わるワイヤーの美しさは繊細なものになっています。こちらの「ダイヤモンドチェア」を部屋に置いてみると、ワイヤーが描くフォルムの美しさとそこから透ける背景さえもデザインされるものとなります。
イタリア生まれの「ハリー・ベルトイア」は、アメリカで金属工房を設立。イームズ夫妻とともにプラウウッドの加工技術を開発し、金属ワイヤーを使った作品を数々発表しています。
彼がデザインしたワイヤーだけで作られたチェアは、座ると体のラインをワイヤーが優しく包み込んでくれるようなデザインです。ワイヤーと言う硬質な素材のイメージとはまた異なる柔らかな美しい曲線が特徴的です。ワイヤーの美しい曲線がお尻や背中を全て優しく包み込んでくれます。
そして、この特徴的な「ダイヤモンドチェア」のデザインをもとに彼は「ベルトイア サイドチェア」「ベルトイア スツール」「ベルトイア ハイスツール」などのメッシュ構造の椅子を次々と作成しています。
ワイヤーの構造美の「サイドチェア」
こちらは、「ベルトイア サイドチェア」と言われるチェアです。座面と背面の曲線、そして脚の直線に至るまで全てがワイヤーとなっています。人のお尻や背中のラインに合わせて柔らかなカーブを描き、こちらもワイヤーが体をホールドしてくれます。
体のラインに寄り添うことがしっかり考えられたワイヤー構造です。
横から見てもワイヤーのメッシュ構造は見事です。そして横から見るとまたその曲線の美しさがさらに際立つのではないでしょうか。
「ダイヤモンドチェア」「ベルトイア サイドチェア」「ベルトイア スツール」「ベルトイア ハイスツール」と言ったワイヤーのみで作ったチェアシリーズをデザインした後、「ハリー・ベルトイア」は家具デザインから身を引きました。
「ハリー・ベルトイア」は、ワイヤーを使って椅子の美しい曲線を追求し続けたデザイナーと言えるでしょう。彼は、椅子の構造を美しく見せるためにあえてワイヤーを使ったデザインをしたと言えます。ワイヤーを使うことで構造をしっかり見せ、美しく透かして見せるという手法を取ったのではないでしょうか。
シートパッドやバックパッドがセットされたものもあり、より寛ぐならばパッドを付けてみるのもおすすめです。パッドはファブリックやレザーから選べ、選んで付ける楽しさも生まれます。
金属の実体を感じさせない線だけで作られた浮遊感、つまり、「ハリー・ベルトイア」の椅子は、全てステンレスなどの金属で製作している椅子ということになります。しかし、金属と言う素材を感じさせない位に細いワイヤーで作られているのが特徴です。細いワイヤーで作られた構造のため、重い金属と言った印象を受けることなく、軽くて浮くようなイメージさえ感じさせてくれるチェアです。
あまり金属の実体を感じさせないワイヤーの細い線だけで作られていますので、透けるような感覚を持った椅子です。空間の中で透けたデザインの椅子は、まるで浮くような感覚の椅子とも捉えられます。
できるだけ細いワイヤーで作られたデザインは、椅子と言う存在を強く感じないで寛げるものでもあるでしょう。いろいろな感覚を楽しむことができるチェアです。
カウンターでおしゃれなスツールのすすめ
こちらは「ベルトイア スツール」と「ベルトイア ハイスツール」で、細く長いステンレスの脚を持ったスツールです。美しく長い直線的な脚に対し、体を支える曲面のワイヤーの対比をこちらでも味わってほしいデザインのスツールです。
これらの椅子でカウンターで食事をしたり、お酒を飲んだりするとおしゃれなものになるのではないでしょうか。シートパッドやバックパッド付もあります。ファブリックや革のパッドでおしゃれに決めてみてはいかがでしょうか。
表はファブリック、裏はワイヤーの「サイドチェアアップホルスター」「ラージダイヤモンドチェア」
こちらは、「ベルトイア サイドチェア」の表を全部ファブリックで覆った「ベルトイア サイドチェア アップホルスター」です。裏は「ハリー・ベルトイア」らしいワイヤーなのですが、表はファブリックで覆っている「ベルトイア」としては珍しい作品です。
座り心地の良さとデザインの美しさを両方感じてもらおうと、ファブリックで覆いながら後ろではワイヤーのデザインが見えるのが魅力となっています。こうしたファブリックで覆っていてもワイヤーで作られた元々の構造の美しさがやはり光るチェアです。
こちらのチェアもワイヤーのみで作られていると言うのが信じられない程の柔らかなフォルムをした「ラージダイヤモンドチェア」です。一つのアート作品と言える大きなダイヤモンドの形をした「ラージダイヤモンドチェア」です。
ファブリックや革のシートで覆われていますが、後ろはこちらもワイヤーのみの構造です。前面の大きなダイヤモンド型のファブリックシートと背面のワイヤー構造が全く別の表情を見せます。
どちらも全く異なった美しさを見せるチェアですが、美しいワイヤー構造があるからこそ、この魅力的なダイヤモンドの形が作られ、美しいファブリックシートができ上がっていると言えます。
椅子の構造美を表現!ワイヤーによるアートの世界
まさに「ハリー・ベルトイア」のチェアは、全てが細いワイヤーの構造美を持ったチェアです。椅子のデザインの美しさをワイヤーにこだわり続けて表現したものと言えます。
椅子は座ることを目的にしていますから、体のラインに沿った曲線、座面や背面の曲線や曲面を作ることで座り心地がいいものになります。そうした自然な曲線や曲面をワイヤーだけで作ることには高い技術を要します。しかし、「ハリー・ベルトイア」はそこにこだわり続けました。
彼の透ける椅子という発想も特徴的なものです。ワイヤーの網目の美しさ、メッシュ構造により透けるという繊細さも魅力の一つです。そして、またそれらはパッドを置くことでも表情が変わります。
「サイドチェア アップホルスター」や「ラージダイヤモンドチェア」もファブリックなどで覆うことでまた別の魅力も兼ね備えた物となっています。
一貫してワイヤーによるチェアを作り続けた「ハリー・ベルトイア」。彼がこうしたシリーズを製作し続けたのも椅子のデザインの美しさをどう表現するかと言ったことが目的だった気がします。椅子の構造美にこだわり続けたデザイナー「ハリー・ベルトイア」です。
彼のワイヤーによって作られた「椅子」と言う名のアートに触れてみてはいかがでしょうか。あらためて椅子の美しさに驚きを感じることができる20世紀の遺産的チェアです。