500種類の椅子を作った「ハンス ・ ウェグナー」の椅子の完成形とは
北欧家具の巨匠「ハンス・ウェグナー」は生涯を通じて00種類もの椅子を作ったデザイナーと言われています。14才で家具職人の見習いとなり、2年後に木工マイスターになった彼の木工家具へのこだわりは彼の生涯を通して貫かれたものです。彼が作った500種類もの椅子にこだわりが込められています。
「椅子の詩人」と呼ばれ、多くの賞も受賞している「ハンス・ウェグナー」の椅子は、ニューヨーク近代美術館を始め多くの場所でコレクションされています。
世界で一番愛された椅子と言われるYの字の背面が美しい「Yチェア」、貝のような独創的な曲面が特徴の「シェルチェア」、孔雀の羽根のような背面を持つ「ピーコックラウンジチェア」など、数多くのチェアが「ハンス・ウェグナー」の手によって誕生しています。
そんな多くの椅子の種類の中にあるのが1949年にデザインされた「ザ・チェア」です。彼がデザインした500種類ものチェアの中で「ザ・チェア」と言った名前が付けられているのはこのチェアしかありません。これこそが「チェア」と言った完成形としての姿が評価された椅子と言えます。まさにチェア本来の魅力にあふれた姿をしているものです。
アームチェアとしてのプロポーションの美しさ
「ザ・チェア」は一見してもシンプルであまり特徴がないチェアと言った印象かもしれません。21世紀の家具と比較してみても普通の家具と言った印象を受けるかもしれません。
しかし、そこに隠された細かなこだわりを見ていただくと、「ザ・チェア」と言った名前にふさわしいチェアであることがわかってもらえます。
コペンハーゲンの有名なインテリアショップ「デン・パーマネンテ」の役員であった「オスカー・フィッシャー」が最初にこのチェアを「ザ・チェア」と呼んだと言われています。凛として真っすぐに立つ脚、そして輝く美しい曲面のアームから背面にかけてのフォルム、そして何より素晴らしい座り心地が「ザ・チェア」と呼ぶにふさわしいチェアと当時みなされて命名されたものです。
特にこのシンプルさがアメリカでは高く評価され、「ザ・チェア」は、1960年アメリカのCNNテレビで大統領候補ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンの対談の際にこの「ザ・チェア」に座ったことで一躍有名になっています。そんな歴史を「ザ・チェア」は名実ともに持ったチェアです。
アームの滑らかな美しさは完璧と言ったもの
このチェアの良さは細部まで細かくみることでわかるチェアです。椅子の完成形とまで言わしめたこだわりを細部へのこだわりで感じてほしいのです。まずは、アームチェアとしての最大の特徴であるアームを注目してほしいと思います。
木工マイスターである「ハンス・ウェグナー」によって作られたこのチェアは、アームの美しさが何より素晴らしいものです。この脚とアームの接合部分の美しさは芸術的と言ったものかもしれません。木目の美しさ、滑らかさ、そして複雑な曲線を描くアームはシンプルであってとてもこだわりのある細かな手作業が施されたチェアです。
このアームに手を掛けたならばその魅力を一度に実感してもらえるのではないでしょうか。木工の芸術品と言ったようなチェアです。
座面の曲面の美しいしなやかさ
さらに細部を見ると、こちらが背面から見た「ザ・チェア」です。座面を支える木目の美しさに加え、美しく湾曲した座面の特徴に気づきます。座った人を優しくホールドする形となっていてきれいな曲面をしています。
たくさんの椅子を作った「ハンス・ウェグナー」自身はこう話しています。
「私の作品は、芸術品ではありません。日用工芸品なのです。ですから、手でさわってください。座ってみてください。そして、よく見てください。曲線を手で追って、つなぎ目を見て、心の流れを感じとってください。みなさんに、私の心、私の伝えたかったことを、ご自分の体を通して少しずつでも感じとっていただきたいのです。私は最もシンプルに、明確に、それが伝わるようにデザインしました」
これが500種類もの椅子を作った「ハンス・ウェグナー」の姿勢です。そして、多くの人が実際に展示会などでこの「ザ・チェア」などに腰掛ける度にその座り心地の素晴らしさに感動するのがやはりこのチェアの魅力です。
横から見た姿も美しい
アームチェアとしてプロポーションの美しさが素晴らしいと言われますが、横から見て頂くとそれがしっかり伝わるものです。
脚も真っすぐな脚のようでいて真っすぐではない滑らかな膨らみを持っています。また、少し背面が下がったように傾斜を持った座面となっています。そしてアームの複雑な曲面が横から見ていただくことでシンプルでありながらとても複雑なフォルムを描いていることを確認して頂けると思います。
そんな細かな随所随所にプロポーションの美しさがあるのです。
無垢材の一つ一つ異なる表情の「ザ・チェア」
また、「ザ・チェア」の魅力は、無垢材の木でフレームが全て作られていてその表情が一つ一つの椅子によって異なることです。一つとして同じ表情の椅子がないことです。
美しい木目の無垢材で作られていますが、その表情との出会いは唯一無二のものです。こんな所にも「ザ・チェア」の椅子の魅力を感じることができるものではないでしょうか。椅子の完成形たる「ザ・チェア」ならではのオリジナリティにあふれた魅力があります。デザイナーズ家具を購入する際の一つしかないと言った満足感を得ることができるチェアです。
背面から見た姿も笠木と呼ばれる背中の部分の木目が特に美しい模様を描いていてうっとりします。これが一つずつ異なるとなると表情の異なる椅子を探してみたくなる椅子です。
ピーチ材、アッシュ材、アッシュ材のブラウン塗装、メープル材、ホワイトオーク材、ウォールナット材など木の材質によってももちろんそれぞれの味わいが異なります。「ザ・チェア」こそ、それぞれの木の材質の違いを最も感じることができるチェアでもあるものと言えるのではないでしょうか。
木の材質を選び、あとは一つ一つのチェアとの出会いを楽しんで頂きたい贅沢なチェアです。
何よりも座り心地が最高の完成形チェア
ここまでご紹介しましたが、「ザ・チェア」の特徴は、座った人が口にするその最高な座り心地が何より一番です。座った人にしかわからないと言われる座り心地の良さはこの「ザ・チェア」のデザインの一つ一つがもたらすものでしょう。
座面が少し丸まっているデザイン、笠木の背の複雑な曲面、アームの美しさ、どれをとっても特徴的な部分によって作られた椅子で、しかもそれらがバランスを保って美しいシンプルな形を作り上げています。
無駄な物がない、そして最高の座り心地と言ったことはまさに「椅子の完成形」と呼ぶのにふさわしいものでしょう。500種類もの椅子を作った椅子の巨匠とも言える「ハンス・ウェグナー」が作ったシンプルな椅子、そこには彼の椅子への究極の思いが詰まったものです。
「ハンス・ウェグナー」が自分でも言うようにまさに使う事によって良さがわかる「ザ・チェア」は、座るための椅子、自分の体を通してその良さを感じ取る椅子と言った醍醐味の椅子です。
「完成形」の椅子として一つ持って置きたい、実際に座りたい椅子です。巨匠が作った「ザ・チェア」の魅力は体感してもらうことでその完成度がわかって頂ける椅子です。